「水泳ではご飯食べていけないよ」|母親からずっと言われてきた一言で勉学に励んだ西山志さん

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西山志さん

profile

兵庫県出身。
高校生のとき、水泳の全国ジュニアオリンピックカップにて、50m背泳ぎで優勝。
他にも国体4位、インターハイ11位。
神戸高校から京都大学経済学部に進学し、スポーツクラブと大学運動部の両方に選手登録。
現在は東京海上日動火災保険に勤務、水泳部にも所属している。

西山志

一般入試を選んだ理由ー”水泳ではご飯を食べていけないよ”

京都大学に進路を決めた理由は何ですか?

そもそも「どこの大学にしよう」という考えがありませんでした。
私の2歳上の姉が高校生の時に何を思ったか「京都大学に行く」と、いきなり言い始めたんです。
私は姉を見て育ってきたので「姉が京都大学を目指すんだったら、負けないように自分も京都大学を目指すか!」という安直な考えで、京都大学を進路に決めました。
私は水泳をやっていて、高校3年生の大会でまずまずの成績を残せたため、他の大学からも声をかけていただいていたんです。声をかけていただいた大学は私立大学が多かったのですが、いくつか国立大学にも声をかけていただいて、その時に「スポーツ推薦」という選択肢もあるのだと気づきました。
しかし、その時に思い出したのが、母親からずっと言われてきた「水泳ではご飯を食べていけないよ」という言葉でした。
水泳は現在、プロも無いに等しい状況ですので、水泳だけをやっていても将来プロにはなれない。そうすると、いざ社会人になった時の選択肢が狭くなってしまうと思ったんです。
母親から「勉強しなさい」と直接言われた記憶はないのですが、「水泳ではご飯を食べていけない」という話が頭に残っていて、ちゃんと勉強もしておかなきゃというのは強く根付いていたんです。
そういった意味で「勉強と水泳」その両軸で大学生活を送ることが重要だということは無意識のうちに自分の中にあり、最終的に私は京都大学の経済学部に一般受験で入りました。

大学卒業後はスポーツを続けようと考えていましたか?

高校の頃は大学卒業後まで水泳を続けることは考えていませんでした。
高校で自分の納得がいく成績が収められなかったこともあって、大学では体育会水泳部に入って水泳をやると決めていました。
しかし、水泳にはプロの世界がほとんど無いことがわかっていたので、大学4年生をゴールに、選手としての水泳は終えるつもりでした。
ただ、やはり水泳が好きだったので、今も会社の水泳部に所属しています。

大学生活は自由だからこそ“軸作り”が大切

大学で学んだことはどのような場面で今の生活やお仕事に活きていますか?

私は経済学部出身ですが、社会人になってから一般的なマクロ経済や会計の知識がよく出てきて、仕事で時折「あ、これ大学で習った」と思い出しながら使えるのが良かったことです。

大学時代を振り返って、あの時やっておけば良かったと思い返すことはありますか?

「これはきちんと学んだ!」と言えるものを作ることです。
高校は数学でも「数1・数A」みたいに、これを学んでおけばいいというものがありますよね。
大学はその逆で学べることが幅広くありすぎて、とにかく単位を取ることが目的になってしまっていたので、浅く広く学んで終わった、という気がしています。
大学で勉強をしてきて、「何が身についた?」と聞かれると、どれも十分に身についてないことが、自分の中でとても後悔していることです。
実際、就職活動をする時にも自分の軸とは何だろうと考えました。
まず「水泳」という軸は1つありました。しかし「勉強」という軸については、大学4年間でこれという軸が見つからなかったんです。
例えば、会計学でも、マクロ経済学でも、どれでも良いので「これはきちんと学んだ!」という何か身につけておけば良かったなと、その時に強く思いました。

“大学運動部ならでは”と感じたことー今に活きる経験

高校の部活動と比べて大学運動部はどんな違いがありますか?

大学運動部ではスポーツを1つの学問として考えているところが高校運動部と違うと思います。
水泳は関東の大学が圧倒的に強いのですが、関西の大学と比較して、圧倒的に強い大学は、科学的なトレーニングをしっかりやっていることがわかりました。
高校まではどちらかと言えば、「根性でやる」という考えが往々にしてあると思います。
しかし、大学の強豪校では、コーチやマネージャーだけでなく、栄養士の先生、ボディーメンテナンスをする方がチームにいる大学がたくさんありました。
今では当たり前かもしれませんが、水中の映像を撮って、解析して、種目専門のコーチが指導しているところを見ると、高校の部活動とは全く違うと感じました。

大学でスポーツをやってきて、どんなことが今の仕事や生活に活かされていますか?

体育会水泳部という厳しい環境の中で4年間しっかりやり抜いたことは自分の自信になりました。
社会人になってから訪れる、辛いことや大変なことなどの逆境に対して、しっかり立ち向かっていけるのは、体育会水泳部の経験があるからだと感じています。
また、体育会の水泳部に限らず、部活動であれば、基本的には主将がいて、それを補佐するメンバーやマネージャー、会計係などがいて、ある程度「ミニ会社」のような組織ができあがっているので、自分がその場その場でどういう役割を担うかを考える力は、自ずと身につきました。

科学的にスポーツを考えたエピソードとそれがどのように社会人になってから役立っているか教えてください。

大学の時に自分達で練習メニューを組んだり、科学的な部分を探求していくのに限界を感じた際、水泳の新しい泳ぎ方を研究している教授の話を聞きつけて、後輩と一緒にその教授の部屋にお話を聞きに行ったことがあります。
その時に感じたのが、大学の教授は様々な研究をしているんだなということと、そういったことを貪欲に学びに行って、自分の可能性を広げていくことが大事だということでした。
その教授の話は聞くだけでもとても学びになりましたし、それを実践してみたところ、私も後輩もタイムを更新することができました。
自分たちで考えるだけでは限界があることは、そのことを知っている第一人者に話を聞くことで、自分の仕事の幅を広げることができるのだと、社会人になってその経験が活きています。

今、高校生に戻れるなら“もっと情報を集める”

大学に行くこと、大学で部活動をすることにはどんな意義がありますか?

大学に行く意義は、就職先の幅を考えた時に、高校卒業よりも大学卒業の方が選択肢が広がるという点です。
大学で部活動をすることの意義は「今しか熱中できないことに打ちこめること」だと思います。
大学生で一番活動できる時に、自分が今までやってきた水泳でさらにいい成績を上げること。これが自分の喜びだと考えて、大学に進学して、体育会水泳部に4年間通いました。
もちろん歳をとってから、もう1度やりたいと思って、水泳を始めることはできますが、成績を上げるという経験はあの大学生の時しかできなかったと考えると、「今しか熱中できないことに打ちこめるのが」大学で部活動をする意義だと考えています。

進路や部活動について、今自分が高校生だったらどんな選択をしますか?

もっとそれぞれの学部でどんなことを勉強するのかを調べます。
私は経済学部に進学したのですが、正直、経済学部がどんなことをするのかがはっきりとわかっていませんでした。
なので、経済学部で学べること、法学部で学べることなど、高校生のできる範囲で情報収集をしっかりした上で、どの学部が自分に合うか、学びたいことや好きなものを確認し、考えてから進路を目指した方が良かったなと感じています。

これから大学へ進む高校生へ

大学を選ぶ際は、単に偏差値が高いとか、有名だという軸だけじゃなくて、その大学がどういった学問を研究しているのかを調べてみてください。
インターネットだけでなく、親御さんや学校の先生、友人・知人からの話を聞きながら、しっかり情報を集めた上で、「これまで得意だったこと」「どういうものが好き」などそういった自己分析をして、それを持った状態で大学を選んでいただければ、きっと後悔のない大学生活が送れると思います。
応援してます!

 

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