岡田 友梨さんインタビュー動画
profile
滋賀県出身。
小学校1年生から柔道を始め、近畿チャンピオン・全国3位に輝く。高校1年生からはレスリング選手となり、格闘技に20年間取り組んだ。
アスリート目線でファッションをらえ、「努力ができる女性がきれいに見える服を作りたい」という思いから企業。現在は経営者兼ファッションデザイナーとして活躍中。
経験したからこそ寄り添える「洋服デザイナー」という天職
現在のお仕事はどんなことをしていますか?
私は小学校1年生から中学校3年生まで柔道をしていて、高校1年生から27歳までレスリング選手として格闘技を20年続けてきました。
スポーツをやっている方だとわかると思うのですが、筋肉がついてくると、局所が大きくなって、お洋服でのミスマッチが非常に多く起こってしまいます。
20年もスポーツをしていると身体も極限まで鍛えられるので、おしゃれをしたいと思っても、なかなか良いお洋服が見つからなかったんです。
昔はアスリートの女性がおしゃれをすることに対して、世の中の拒否反応が非常に大きかったのですが、体の形が変わるまで努力ができる女性であるにもかかわらず、その体型がキレイに見えるお洋服が世の中に無いことの方がおかしいと思っていたので、自分で会社を立ち上げてお洋服を作ろうと思い、今の仕事をしています。
お洋服を生み出すことと、そのお洋服を使ってどのような着こなしをすれば良いか、どのような素材を使ったら体の気になっている部分を少しでもスタイルよく、すっきり見せられるかをお伝えするのが主な仕事です。
現在のお仕事をやっていて良かったと思うことは何ですか?
そもそもアスリートは体を鍛えること、勝つことに特化していて、「おしゃれになりたい」ということも諦めて生きている方が多いんです。
そんなアスリートとして生きてきて、自分に合う服があることに気づいていない方の「え、好きに選ぶことができるの?」という感動は、当たり前に服を楽しんでいる方よりも非常に大きいです。お客様にお会いした時や直接お話をさせて頂く機会に、本当に泣いて喜んでくださる方もいるぐらい、喜んでくれる方が多いんです。
今、「個性を大切にしようね」という世の中に進んでいると思いますが、どうしても体型となると受け入れるのが難しい方って非常に多いんですよね。太っていることにコンプレックスを感じていたり、自分の体の一部が太いことに対して、悲しんでいる方だったり。
そんな、体型を馬鹿にされても笑ってごまかしているけど、心の中では悲しい思いを秘めている方の気持ちがわかるので、どういったものが世の中にあればその方たちを本当に心から笑顔にすることができるのか、自信を持っていただくことができるのか、そういった気持ちに寄り添って、一緒に喜んだり、悲しみを共感することができるところが仕事をしていてやりがいを感じられる部分です。
「あの人に勝ちたい!」強い想いで決めた大学進学
どのような経緯で進路を決めましたか?
滋賀県の八幡工業高校という高校に在籍して、1年生からレスリングを始めました。
工業高校は少し特殊で、男子生徒の数が圧倒的に多かったんです。
なので、レスリング部に所属したものの、女子は私だけでした。
そこで、部活動を見てくださっていた先生が、至学館大学の監督の先輩だったこともあり「女子選手が入ってきて、強くしてあげたいんだけど、育て方がわからない。週末だけでも良いから面倒を見てくれないか」ということで、至学館大学によく練習に行かせていただいていました。
それまで私は9年間柔道をやってきて、ある程度の基礎体力と全国に出場するだけの実力を持っていたにもかかわらず、至学館大学の先輩方に1ミリも敵わなかったんですよ。
当時、その至学館大学に、小原日登美さんというロンドンオリンピックで金メダルを取られた方がいらっしゃって、その方が当時の世界のMVPだったんです。
その時に、もしも今世界で誰も勝てない、世界で一番強い女性に最初に勝つ人間が自分だったらかっこいいんじゃないかなって。
本当にそんな単純な気持ちで至学館大学に進学したいと思うようになりました。
練習が大好きだったので、頑張って練習していたら至学館大学の監督の目にも止まって、「お前は絶対強くなるから、ぜひうちに来てほしい」ということでご縁があって至学館大学に進学しました。
大学時代に勉強して良かったと思うことは何ですか?
学校のカリキュラムというより、私の場合は人間関係を学ぶことができたと思います。
私は大会や遠征などで授業を抜けざるを得なかったり、授業に出席することができない期間が多々ありました。それでも他の学生と同じように単位をもらおうと思うと、当然のことですが、それだけの認められる行動が必要なんですね。
最後はやはり人間と人間なので、「自分はスポーツやってるからいいじゃない」というわけではなく、どう自分が行動したら先生も気持ちよく大会や遠征に送り出してくださるかを考えることが大切だと学びました。
教科の先生にとって、私がレスリングでどう強くなるかは関係ないことなので、きちんと評価してもらうために、課題を確実に提出するとか、認められ、受け入れられるためのボーダーラインを確実に超えることを心がけていました。
大学で学んでおけば良かったと思うことは何ですか?
感覚だけでなく、知識として落とし込めるくらい授業にしっかり取り組むことが大事だったなと思います。
私はスポーツ競技そのものに関しても、減量などの体型管理でも、「こんな感じかな?」と、かなり自分の感覚に頼ってやっていたんです。しかし、10代、20代、30代とそれぞれの感覚でやってしまうと、その時は良いのですが、当時鍛えていた体の感覚と今の感覚が全然違うので、社会に出てもその説明ができないんですよ。
そうすると、やっぱり全部手探りになってしまうんですね。今思えば、解剖学であったりとか、栄養学、心理学など、知識として落とし込めるぐらいの授業を受ける時間はあったわけなので、そこでしっかりと興味を持って、授業に参加して、知識を落とし込んでいったら役立ったのではないかと少し後悔しています。
私はどちらかというと、単位が取れれば良い、点数取れれば良い、そのためにテストの範囲も読み込んで、テストが終わったら忘れちゃうような学習の仕方だったので、もったいなかったなと。
感覚という必ずズレが出てくるものに対して、知識という確実なものを持っていたら絶対将来的にも役立ったはずなのにと、とても思います。
自分の興味を深堀ることで道が拓ける
大学に進学することにはどんな意義がありますか?
大学は中学校、高校と違って学びたいことを選択できることに意義があると思います。
高校までは国数社理英みたいな世界ですが、大学は学部から選ぶことができて、興味があることを選ぶことができるんです。
だから、選ぶことができる時に、選ぶ能力が自分にないのは非常にもったいないことだと思います。
私はまさに感覚で「あの人に勝ったらかっこいいから、至学館大学に行こう」という選び方で、大学の学べる部分に一切目を向けていなかったんです。
選ぶ能力がないと損をしてしまうのが大学なので、自分は何に興味があるのかを知っておくことで、大学の学部選びや授業選択で、私みたいな失敗をせずに学ぶことができると思います。
自分自身が興味があるものを知るためには何をすると良いですか?
「自分は何に興味があるんだろう」と考えるのは抽象的なので、何にお金と時間を費やしているかを振り返ると、自分の興味があることに気づけるのではないかと思います。
なぜなら、お金をかけるということは、自分がお金を出してでも欲しいもの、価値を感じてるものであって、意欲的に学べるものなのではないかと思うからです。
例えば好きなミュージシャンがいて、推し活をしているのだとしたら、音楽が好きかもしれないし、音楽に関わる仕事をしたいかもしれないですよね。そうなると、音楽に関わるお仕事って何だろうなと考える。PRであったりとか、広告宣伝とかに興味があるかもしれない・・・。というように繋げていくイメージですね。
そうやって私自身を振り返ると、お絵描きが好きな女の子だったんですよ。
中学校の時から体型を馬鹿にされることに若干悩んでいて、かわいくなりたいなと思い、当時から独学で服の研究をしていたんですね。
お金がちょっと手に入ったら服を買って、「こっちの素材よりこっちの素材の方が痩せて見えるな」とか、そういうことに時間とお金をスポーツ以外で費やしていました。で、お絵描きが好きなので、「こんな服があったらかわいいな」という絵を描いていたんです。
そして、その興味が不思議なことに現在の仕事に繋がっているので、時間とお金をかけても苦じゃなかったことが、自分の仕事になっていることがとても幸せなんですね。
今まで趣味だったものが知識になって、夢になっていくって非常に素晴らしいことなので、私はそういう生き方が素敵だなと思っています。
これから大学へ進む高校生へ
高校までと大学からで圧倒的に違うのが、自分の意思と選択で未来が決まっていくことです。
大学生になると、大学在学中に20歳を超え、大人に向かう時間になっていきます。
スポーツをやってる方はものすごく真面目な方、責任感が強い方が非常に多い反面、「あの子、あの人より劣っているから自分はダメだ」とか「あの人より競技成績が悪いから自分はダメなんだ」とか、他者と比べて自分を評価する方もとても多いです。
スポーツは特にわかりやすく、1位2位3位と順位が出てしまうので、自信が持てなくなったり、スポーツを通した社会の評価に惑わされがちです。
「1位だから、あの人は素晴らしい」「メダルを取ったから素晴らしい」「自分はメダル圏内にも入れなかったから・・・」それを『人間』として捉えないこと。
それはあくまでスポーツの結果であって、人間としてダメなわけでは決してありません。
生きていく上で本当に大切なことは「自分自身」です。
自分自身は何をしたくて、何に興味があって、どういう未来を築きたくて、現在自分はどういうことに興味があって、何のために学んでいて、何のためにこの競技をやっていて、人としてこうありたい、ということを自分の口で語れるぐらい、惑わされない「自分自身をしっかり持つこと」がとても大切だとお伝えしたいです。